関西人間図鑑  【第16回  

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映画は料理、監督はコック
 5人姉弟の末っ子で長男。寺の後継ぎとして両親の期待は大きく、勉強漬けの少年時代を過ごした。小さい頃の思い出といえば、家族揃って外食に行ったこと。そのせいか趣味は食べ歩き、特技は自分のみつけた店に知人を連れて行くことだ。映画を料理、監督をコックによく例える。
「おいしい店をみつけたら、友人を連れて行きたいでしょ。 自分がおいしいと思うものを、友人がおいしいと感激しながら食べる姿を見ることほど愉快なものはありません」
 今年で9回目を迎えた『プラネット映画祭』では、 今、注目されている映画監督・北村龍平氏の作品を初めて映画祭という華やかな舞台に引き上げた。
「くすぶっている才能を世間に紹介したいんです」
お金はあとからついてくる
 小学生のとき、「将来の夢」というテーマで作文を書いた。
「クラスのみんなはパイロットとか、プロ野球選手とか将来なりたい職業を書いているのに、自分には坊主になって寺を継ぐ人生しかない。自分の運命を子どもながらに恨みました」
 悩んだ末、「立派なお坊さんになりたい」と作文に記した。  
 大学では放送部に所属し、学園祭の企画・進行で才能を発揮する。 卒業後、実家の寺を継ぎ、作文で公言したとおり僧侶になった。しかし、学生時代に味わったイベントを仕掛ける楽しさが忘れられず、大阪府の施設であるプラネットステーションのボランティアイベントスタッフとなり、現在はフリーのイベンターとして多くの映像イベントをプロデュースする。
「とにかく多くの人に足を運んでもらうことだけを考えています。儲けようなんて思わない」
 仏に仕える身だから、俗っぽさがない。
「人が多く集まれば、お金もたくさん集まる。すると次へ繋がるんです」
 結局お金を出すのは人なのだ。 袈裟の中から凄腕イベンターが顔を覗かせた。


 


≪分類≫
イベントプロデューサー目
浄土真宗科

≪生息地≫
西淀川区姫島

≪年齢≫
33歳


≪分布≫
扇町界隈、仏壇の前

≪活動時間≫
9時〜15時
16時〜翌2時

≪好物≫
B級グルメ

≪相棒≫
ボランティアスタッフ

≪天敵≫
口だけで行動しない人

 
取材・文/北村 守康