Since 【第27回  

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1 空前のファンシーブーム
 野杁さんが家業の文具店を継ぐため、会社を辞めたのは昭和49年。実家の『せのや文紙店』は、創業が江戸時代にまでさかのぼる老舗の文具店だ。子供の頃からよく店の手伝いをしていたこともあり、店の状態については理解しているつもりだった。
「ところが、私が事業を継いだ当時、文具だけで店を維持していくのはとても大変でした。昔から文具店は馴染みのお客にサービスするのが当たり前やったんですが、そのサービスが時代に馴染まなくなったのもあり、なかなか新規のお客が増えんかった。どうにかせなあかん」
 そう思って、よりお客さんに愛される店を模索した。
「そこで、思いきってファンシー・バラエティショップに業態転換したんです」
 1970年代中頃、ちょうど大手メーカーキャラクター商品ブームが到来。大阪ではまだファンシーショップが少なかったこともあり、ファンシーグッズが飛ぶように売れた。当時の馴染みのお客さんから贈られた額入りの刺しゅう絵を、今も大切に持っている。ファンシーグッズの人気キャラクターが描かれたものだ。


 

≪KEY PERSON≫

野杁 育郎氏(57歳)

≪PROFILE≫

[出生・出身地]
1948年 大阪市

[好きな言葉]
いちびり、はんなり

[趣味・特技] 
なにわの商品開発、いろいろな人との交流


≪COMPANY DATA≫

●創業●
1974年10月

●事業内容●
大阪名物・観光みやげ専門店の経営、なにわ新名物の企画・開発など

●所在地●
大阪市中央区難波1-7-2


 
取材・文/大久保由紀  写真/小島義秀