関西人間図鑑  【第5回  

 >2>
 

べつに映像じゃなくてもよかった

 14歳のころ、たまたま家にあった父親の8mmビデオカメラを手に取った。「とにかくなにかを表現したかったんでしょうね。当時、近所の公園に変わりものの親子が住んでて、彼らのドキュメンタリーを友達とつくった。それが初めての作品です。そのときは、べつに映像じゃなくてもよかったんですよ。ペンがあれば書いていただろうし、カメラがあれば写真を撮っていたかもしれない」それから、映像の魅力にぐんぐん引き込まれていく。「興味のあるものはなんでもビデオカメラで記録しました。オープンなゲイだった祖父のドキュメンタリーや、ドラえもんのパロディを実写版でつくったりして」
映像にとって、音楽は最愛の敵
 映像に欠かせない存在がある。同じレーベルに所属する『P-shirts』という音響系ロックバンドだ。映像にP-shirtsが音楽をつけ、P-shirtsの音楽に映像をつける。
「映像が音楽より前に出れば“映画”と呼ばれ、その逆なら“ミュージックビデオ”と呼ばれるんでしょうね。僕らの関係はそのどちらでもない」 
 以前は、いわゆる“映画”や“ミュージックビデオ”を撮っていた。「でも、」いつも注意深く言葉を選び、ゆっくりとしゃべる。
「俳優や音楽に依存する映像はもうええやろ、と。それは僕がつくらなくても、ほかの人がつくってくれる。僕が目指すのは、音楽より上でも下でもない、新しい映像。今まで映像をやってきて、やっぱり音楽には勝てないんだと痛感したから。人間は、視覚より聴覚に反応する生き物なんですよ」


 


≪分類≫
淋派目 
映像科

≪生息地≫
大阪市

≪年齢≫
不祥


≪分布≫
河原や場末

≪活動時間≫
24時間

≪好物≫
タバコ、カレーライス

≪相棒≫
P-shirtsの中島伸一

≪天敵≫
音楽

 
取材・文/岸良ゆか