関西人間図鑑  【第28回  

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人工ボディの生みの親
「ほら、これは赤ちゃんの小指。本物の指と同じでやわらかいやろ? こっちは男性の中指。赤ちゃんのに比べたら、硬めに作ってあんねん」  まるで、名刺交換のようにサラッと差し出す。そう、ここは人工ボディを製作する工房なのだ。先天性の障害や事故、病気などで失われた手足や胸、耳、目などの身体の一部を、皮膚の質感に近い人体用のシリコーンを使って復元する。
「一般的に義手や義足とか呼んでいるものを総称して“補綴”(ホテツ)って呼ぶねん。でも、一般の人にはなんのことかわかりにくいやろ。それよりも、人工ボディのほうが温かみがあるし、わかりやすいと思って自分で命名したんです」  彼女が製作する人工ボディは、見た目のリアルさから肌のみずみずしさ、弾力感まで伝わってくる。
「失敗した人工ボディを捨てたら、野犬がゴミ袋を食いちぎって警察沙汰になったこともあるんですよ」
 それほどリアルなのだ。しかも、人体のパーツならどの部分でも製作できる、日本でただ一人の技師であり、国内だけでなく、世界各国からも依頼が来る。


 


≪分類≫
姉御肌目 
人工ボディ技師科

≪生息地≫
大阪市住吉区

≪年齢≫
34歳


≪分布≫
工房アルテ内

≪活動時間≫
週3回は9時過ぎまで工房
その後はママ業

≪好物≫
布団(寝るの大好き!)
最近は愛娘と石集め

≪相棒≫
愛娘の七海ちゃん

≪天敵≫
好きなものも嫌いなものも人間

 
取材・文/松原 宏子  撮影/小島 義秀