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1 本末転倒の事業
 「こんなん、プロやない!」
 リングに立ちながら、なにかがおかしいと思った。
「登録契約を結ばんのはあたりまえ。ギャラもまともに支払ってもらえず、お先真っ暗。それにパンフレットの印刷代を印刷会社に支払わへんこともあった。プロレスの興行会社ってとこはなんでもナァナァで通る。“プロ”ってついてるのにまるで子どもの遊びみたいやった」
 20歳の頃、憧れのプロレスラーになれたものの、リングの裏側は散々だった。
 国内でいくつかの団体を渡り歩いたのち、故郷の大阪で「大阪プロレス」を旗揚げ。キタの南森町に事務所を開いた。団体のロゴデザインは、テレビ番組で共演した石坂浩二氏。苦い新人時代を送ったからこそ、自分がつくった団体ではきちんと契約書を交わし、年俸制まで導入した。
「プロ野球選手とまではいかんでも、せめてサッカー選手並みの金を出してやりたい。充分な給料を出したったらほかでバイトせんでいいし、時間があれば肉体づくりに当てられる」
 選手たちにとって、これほどありがたい環境はない。


 

≪KEY PERSON≫

スペル・デルフィン氏(55歳)

≪COMPANY DATA≫

●設立●
1999年4月

●事業内容●
プロレス団体。プロレス会場運営、オリジナルグッズ販売など

●所在地●
大阪市浪速区恵美須東3-4-36 フェスティバルゲート2F



 
取材・文/中野 純子  写真/滝沢 稔