Since 【第7回  

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2 信用を得るための“お試し”
「はじめは法衣を1枚だけ渡されるんです。どうも信用されていないみたいで……。うしろにはまだいっぱい隠してあるのに」
 事業をはじめたころ、飛び込みで寺院に行ったときのことだ。
 法衣や袈裟。それを洗ったり直したりするのは、従来、住職の妻や近所の女性たちの仕事だった。先祖代々のものを使っていきたい。しかし、現代の女性にとって和装の洗濯や針仕事はなじみのないものだ。そんなとき、代行してくれる業者が現れたら飛びつきたくなる。だが“寺の宝”を他人に託すのには抵抗があるのも事実。そこで1枚だけ“お試し”となるのだ。
「きれいに仕上げて返すと、すぐに電話がかかってきますね。“もっとあるからすぐ送る”って。職人さんが想像以上の仕事をしてくれるからなんです」


 

≪KEY PERSON≫

西谷 謙二氏(55歳)

≪PROFILE≫

[生年・出身地]
1948年香川県生まれ

[趣味・特技]
人間ウォッチング

[座右の銘] 
計りごとは小さい。
時は大なり。

≪COMPANY DATA≫

●創業●
1994年5月

●設立●
1996年2月

●事業内容●
法衣の丸洗いと補修、宗教美術織物の企画制作

●所在地●
京都市伏見区新町3丁目487



 
取材・文/チノナツコ  写真/滝沢 稔