Since 【第19回  

 >3>
 

3 小松屋応援団部
 小松屋には「応援団部」がある。「お客様のことを大好きな親戚の“おっちゃん”や“おばちゃん”だと思い、共に大きくなっていきたい」という気持ちから組織された。
「一緒に楽しみたいんですわ。自分の身内が元気ないとおもしろくないしね」
 相手の出方ばかり探っていた従来の「取り引き」から「取り組み」へ発想を変えていった。
「社員に対しても同じような気持ちです。やらされていると思うから楽しくない。会社を自己<実現できる場所だと考えると、企業文化が成り立つと思うんですけどね」
 若い社員には単なるサラリーマンで終わらずに、それぞれが自分に<合った分野で社長になってほしいと思っている。
「事業を興すほど、楽しいことはありませんからね」
 多額の借金を抱え、崖っぷちからスタートしたとは思えない力強い言葉だ。
「結局、ムダのいっぱいある人には勝てない。キレ者の周りに人は集まらんでしょ」。
4 パンツを脱いで
 3年前にパニック障害に陥った。電車にも乗れず、不安で眠れない日々が続いた。
「そのころは一部上場とか、売り上げがどうのばかり考えていて、力んでいたんだと思います」
 社員に対しても同じだった。
「なんでわからんねん!って、必死になって相手を変えてやろうと意地になっていました」
 社内の雰囲気は悪く、社員から笑顔が消えていった。しかし、霧が晴れるように病気から抜け出した瞬間、すべてはうまく回りだした。
「何がきっかけって、特にないんですよ。でも、スーッと青空が広がっていくような感じで憑き物が落ちていった。今ではもう、社員に対して『まぁ、がんばってねー』ですわ(笑)」自らの体験を堂々と講演で語り、必要に応じて相談にも乗る。「実際に体験したモンに言われたら、楽になりますからね」
 今はパンツ脱いで生きているようなもんですよーと、ハハハッと豪快に笑う。


 

≪KEY PERSON≫

藤田 牧雄氏(39歳)

≪PROFILE≫

[生年・出身地]
1965年 松原市

[趣味・特技]
「なぁんも、ないなぁー」

[座右の銘] 
脚下照顧


≪COMPANY DATA≫

●創業●
1991年6月

●事業内容●
大阪府一円をエリアとする業務用酒類販売業

●所在地●
大阪府松原市天美東9-16-18

 
取材・文/中村 神無  写真/滝沢 稔